FORTUNE ARTERIALss 『その一撃を』  とある日の朝5時。シスター天池は朝の礼拝をし、今朝の祈りを捧げていた  5時半に一度部屋へと向かっていた。その時見えた男の影  シスター服の下に仕込んであるフライパンを取り出す  標準装備というと可笑しな話だが、彼女にとっては標準装備である  元々持ち始めた理由が理由なのだが  ゴーーンという音が、朝早くから響くのだった  その日の朝、さらし者にされてる男子生徒が居た。  たんこぶを作り、首からさげてるプラカードには『この者不届き者である』とかかれ  意識を失いつつも、玄関にこてりと座らされていた  ただ、文字がシスター天池の文字なので、誰もが理解した  ああ、マジ殴りにあったんだ、と  ただ一人理解していない者が居た。生徒会役員の一人である支倉孝平だ  いきなり目の前にある、誰かに対して保健室保健室と抱き上げて連れて行く  と、途中でへばったのか靴を履かせて引きずっていった  周囲の面々は、アーメンと祈りを天へと捧げる  支倉孝平の今日は、平穏から程遠いだろうと 「あ〜〜〜!! せっかくさらし首にしておいた人が居ません!!」  シスター天池の声が響くが、そんなこと知ったことかと孝平は歩いて保健室へと連れて行く  その頃シスター天池は孝平が連れて行ったという証言を得て、歩き出す  そんな様子を影から見ている会長 「ふふっ、面白そうな事態だね。さてさて、支倉くんはどうやって回避するかな」  本当に楽しそうである  午前、午後と授業の間は何事も無く過ごしていく  孝平は気になったので、保健室に行くと学生も無事に元気に過ごしてると聞いた  保健室の先生は良い生徒だと歓喜していた 「あらあら、やぁっと見つけましたわ」 「シスター天池、どうかなさったのですか?」 「この者がせっかく私が、お仕置きもかねてさらし首にしていたのを、持っていったんです」 「いや、さすがに血も出てましたし、朝の登校時にスプラッタとか普通に辛いですし」  確かに、朝に頭から血を流してる学生が、玄関に倒れていたら気持ち悪い  肝っ玉が小さいと気を失いかねない光景だ。周囲は理解していたが、孝平は知らなかった 「シスター天池も、そんなお仕置きというのも分かりますが、彼は良いことをしましたよ」 「ですが」 「それに、彼は困ってる人のために頑張ったんです。それは神の教えに背くことですか?」 「それは」  う〜んと考えるシスター天池  クリスチャンだからこそ、少し考えてしまう  フライパンはお仕置きのためのものだ。 「お仕置きといえど、さすがに学生がそれで遅刻しそうだったりしたら  生徒会の者としては見過ごせませんよ」 「分かりました。今回はすみません」  少しむっとして怒るシスター天池  孝平は少し、いや、本当に笑ってしまった 「くくっ」 「何がおかしいのですか!?」 「いえ、可愛いな、と思いまして」 「何をいきなり言うのですか!!?」  顔を赤くして、孝平へと言う  保険医は苦笑いだが、確かに、こうやって言われてはじめて可愛いと分かった  少し子供っぽいというのも可愛いところであると言える 「だ、第一私は先生ですよ」  頬を赤くして言われても説得力は無い  孝平はくくくっと笑いは収まらない  一生懸命に堪えてるのだが 「それに、ちゃんと見に来たじゃないですか。心配になって見に着たんですよね?」 「くっ」 「意外な真実だなと思いまして。お仕置きはするが、そこはそれ、これはこれなんですね」 「もぅ〜! 此処は保健室ですよ、静かにしなさい」  振りかぶられた。その手にはフライパン  ゴーーーンと音が鳴り、孝平は落ちた  いや、意識が……平たい面で叩かれた頭 「わわっ、シスター天池、さすがに抑えないと」 「あ! あわわ、ごめんなさい。支倉くん、無事!?」  いや、無事なら意識は失わないだろう  軽くチェックをするが、大丈夫だと頷く 「少しは加減してくださいね」 「はい」 「それと、天池先生が見ていてください。私は監督生室へと行って支倉君が意識失ってるのを伝えておきます」 「ええっ!!」 「良いですね」 「はい」  保険医は年配の先生だ。シスター天池も世話になったことがあるほどの  そのために、頷くしかなかった。先輩だしというのもある  ベットで横になってる孝平を見る 「神よ、お許しを」 「祈るくらいなら、しなかったらいいのに」 「うぇぇぇ!! 起きてるなら」 「まだ、頭がくらくらしますよ」 「うっ」 「かなでさんがマルちゃん、会長が志津子ちゃんって呼ぶ理由分かります」 「呼んだら本気で忘れるまで殴りますよ」 「分かってますよ」 「もぅ」 「もう少しベット借りてても大丈夫でしょうか?」 「大丈夫じゃないかしら」 「じゃあ、30分くらいしたら起こしてください。行かないと」 「分かりました」  保健室の主はただいま見回りを兼ねて動き回っている  仕方ないだろう。この場合鍵を閉めるか、誰かいるかだ  ただ、ドアの近くに人が居た。ローレルリンクの白である  此処に天池が居てると聞いてきたのだが、中には仲間である孝平もいるのだ  そのために入り損ねたのである  仕方ないとばかりに離れて歩いていく。兄さまに相談しようと心に決めて  だが、監督生室で話をしてしまえば、それは会長と副会長の耳に自然と入った  その翌日、シスター天池はとある女子生徒から、こんな話をもれ聞いた 「支倉孝平という、生徒会役員と保健室で二人きりで、口では出せないことをしていたって本当ですか!?」 「そんなわけあるわけないでしょう!!!」  ちなみに、二人目である。噂は尾ひれと背びれがつくもの  支倉孝平は素直に話し、保健室で寝たのは、少し気分が悪かったためと  そして、シスター天池も、噂の根本を見つけて叩き潰した文字通り  ただ、二人きりでいたときのことはシスター天池は話さなかった 「秘密です」  彼女にとって、二人で居た時間は何か大切な時間だったようだ  おわり